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風という資産を活かし、ともに地域の未来を拓く

北海道の最南端、松前町に位置する「リエネ松前風力発電所」は、日本最大級の高さを誇る風車を擁するとともに、道内では初めて蓄電池を併設した風力発電所です。松前町を舞台に、地域活性化に取り組む石山英雄松前町長と現地で事業を推進する山中慎司が、風力発電とまちづくりについて語り合いました。

(左から)
北海道松前町 町長 石山 英雄さま
東急不動産株式会社 戦略事業ユニット インフラ・インダストリー事業本部 グループリーダー 山中 慎司

閉塞感を打ち破るために、「風」をつかんでいきたい

山中:東急不動産は松前町での風力発電事業計画を2016年に開始し、2017年には「リエネ松前風力発電所」の建設に着手、2019年4月3日に運転を開始しました。当社が松前町に風力発電所の建設を決めたのは、ここに日本でも有数の強い風が吹いているからです。環境省が公表する「再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)」では、風の強さの測定値を公表していますが、松前町は最も風力の強いエリアです。

石山:風力発電所ができたことで、自然の恵みである風に地域の可能性を見つけることができました。松前町は、マグロや松前牛、1か月かけて楽しめる桜の名所など、観光資源に魅力があるものの、人口減少が進み、産業の主力である漁業も苦戦しています。町の閉塞感を打ち破るためにも、今まで吹いていなかった「風」をぜひ、つかんでいきたいですね。それをもっと町民の皆さんや子どもたちにも知ってもらいたい。

山中:私たちは松前町の小学校で出前授業を行いますが、小学生からは「なぜ、松前町に風力発電所をつくるのですか」とよく聞かれます。子どもたちには「松前町には日本でも有数の風という資産があるんだよ」と力説しています。

石山:以前、風力発電所の建設工事中に、地元の小学生を招いて現地見学会を開催されましたね。風力発電機の上部に設置する「ナセル」と呼ばれる機械室に、思いおもいに絵を描いてもらったのは良い体験だったと思います。

山中:子どもたちに、町で取り組んでいる風力発電の価値をもっと知ってほしいという思いから企画しました。絵を描いてもらうことで身近に感じてもらえたと思います。

「ナセル」に絵を描く子どもたち

石山:2019年12月には、東急不動産と「風力発電事業と地域活性化に関する協定書」を締結し、風力発電の推進と再生可能エネルギーを活用した地域振興を進めていく土俵ができました。再エネをきっかけに現状を打開し、ともに連携して地域の振興と発展をめざしていきたいです。

新たなエネルギーシステムの構築で、町に価値創造を

石山:2020年7月に松前町と東急不動産は、経済産業省による「令和2年度 地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業のうち、マスタープラン作成事業)」に採択され、事業実証に着手しました。

山中:当社は再生可能エネルギー事業を通じて、事業を行う地域の皆さんと一緒に地域活性化に取り組んでいます。そのひとつとして、「リエネ松前風力発電所」では、既存の送配電網を活用した「地域マイクログリッド構想」で、災害に強いまちづくりに取り組みます。

石山:2018年9月に発生した胆振東部地震では、北海道全域が停電しブラックアウトする事態が発生しました。松前町でも約2日間の停電を余儀なくされ、店舗や飲食店、宿泊施設は冷蔵庫の電源を失い、生鮮食品や食材を破棄しなければなりませんでした。町内の病院は発電機で乗り切りましたが、入院患者や透析患者も抱えていたため、停電は生命に関わる事態だと強く危機を覚えました。その経験から、自立した電力供給の確立は不可欠だと実感しています。

山中:現状は非常時対応の地域マイクログリッドですが、将来的には国がめざしている配電事業のライセンス化と結びつけていきたいです。配電事業が実現すれば、配電のシステムや設備、電線などを管理する人員が必要となり、派生した事業は地域の課題である産業振興と雇用の創出につながると考えます。

石山:地域電力組織を立ち上げられれば、町もそこに出資しながら、自立した発電を供給することが可能となります。再エネを活用したさまざまな地域振興や産業振興の可能性も広がります。町としても夢ではなく、目標として設定していきたい。東急不動産のノウハウと高い推進力は共同事業者として大変心強いです。

山中:ありがとうございます。将来的には松前町の電力がすべて再エネ由来となる環境にやさしい町をめざします。気候変動による地球温暖化問題は、世界において喫緊の課題であり、エネルギーの枯渇問題は数十年前から叫ばれてきました。再生可能エネルギーの重要性が増すなか、町に持続可能な新たな価値が生み出されると期待しています。

石山:松前町では、松前沖で洋上風力発電の誘致も検討しています。

山中:実現すれば、配電事業同様に、地域産業の活性化や持続的な雇用も生み出せるなど、洋上風力の波及効果が期待されますね。

石山:再エネを取り込み、安心安全でクリーンな町になることは、町のイメージアップにつながり、新たな強みとなる大きなチャンスです。この町を存続させ、子どもや孫の代にも伝えていくことにもつながります。

リエネ松前風力発電所

松前町で再生可能エネルギー事業のプラットフォームを構築する

石山:東急不動産は、松前町に事務所を置き、4名の従業員が常駐していますね。皆さん、行事への参加や議会の傍聴など、松前町の課題と取り組みの現状を理解することに積極的です。さらには、新たな「ふるさと納税」の立ち上げでは、システムの仕組みなどについて、町職員と丁寧に議論してくれました。皆さんの行動力が町には大変刺激になります。

山中:風力発電事業以外でも地域貢献できないかと考え、ふるさと納税の企画を検討しました。皆さんの考えを理解し、真の意味での地域貢献になることを進めていければと思います。東急不動産は2021年6月、「一般社団法人 再生可能エネルギー地域活性化協会(FOURE)」の設立に参画しました。この協会では、地域と事業者がWin-Winとなる枠組みの提供、再エネを通じた地域活性事例の情報提供、そして、その実現に向けた自治体の支援をしていきます。当社では、松前町との取り組みを協会の知見に反映したいと考えています。まずは松前町と一緒に発展していける再エネ事業のプラットフォームを構築し、それを別の地域に応用する。こういった一つひとつの取り組みが再生可能エネルギーの普及促進に貢献できると考えています。

石山:東急不動産は町と本気で地域活性化に取り組む頼もしいパートナーだと確信しています。これからもよろしくお願いします。

山中:こちらこそ、よろしくお願いします。

2021年6月取材時。2021年8月現在、3名。

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