GROUP ACTIVITIES
TFHD GROUP MAGAZINE
2019年12月23日
東日本大震災から8年。
被災地の気仙沼で私たちが取り組んできたこと。
東日本大震災以降、東急不動産ホールディングスグループでは、東北での復興支援に取り組んでいます。グループ従業員が、気仙沼の内湾地区で商業施設開発のお手伝いをしているのも、その一環です。 現地で支援を続ける東急不動産の総務部・土屋へのインタビューから、震災から8年が経った気仙沼の今をお伝えします。
インタビュー
土屋 光夫:東急不動産株式会社 総務部(都市事業本部 商業施設運営部 兼務)
気仙沼ににぎわいを取り戻す、商業施設開発を支援
東急不動産ホールディングスグループでは、震災のあった2011年に、東急ホームズによる会津若松での被災者用住宅の建設やリゾート施設での避難者受け入れの活動を行っていました。また、現地での活動だけでなく、東急プラザ銀座を開発するために買収した銀座東芝ビルの1階空き店舗を被災地支援に役立てる活動なども実施していました。そのような支援を行うなかで、2012年に気仙沼市から復興再生に向けた支援要請をいただき、当社の従業員が気仙沼で業務支援を行うようになりました。2012年以降は、被災土地の換地計画や区画整理事業など、開発事業で実績のある当社ならではの支援を行っています。
私は現在、2016年から当社グループで4人目の担当者として、月に2回ほどのペースで気仙沼に足を運んでいます。きっかけは、復興に向けた最終局面として、被災前の繁華街である「内湾地区」の再生に向けた商業施設開発計画の実現が、気仙沼市の重点目標となったことです。気仙沼市および商工会議所が出資する街づくり会社「気仙沼地域開発」より、商業施設事業の開発・運営計画に対する支援を行うことになり、私が担当することになりました。具体的には、施設計画の立案やマーケティング分析、出店者とのコミュニケーションなど、当社の商業施設事業で経験してきた業務を活かした支援をさせていただいております。
海に開かれた、もう一度海を好きになる施設をめざす
福島や熊本は訪れたことがあったのですが、気仙沼には、この業務を担当してから初めて行きました。2016年5月の初訪問時、流された土地のかさ上げ工事の真っただ中で、津波被害の甚大さに呆然となったこと、甚大な被害を受けたにも関わらず、仮設店舗で商売を再開されている方たちと話したことで非常に感銘を受けたことを、今でも覚えています。私自身、これまでに取り組んだ二子玉川などでの街づくり事業の経験を活かしたいという想いから、地方創生事業にも興味を持っていたのですが、「地元の方のためにがんばろう」という意識が、より強くなりました。
気仙沼は海から甚大な被害を受け、今も海に近づけない人がいます。気仙沼は港町であり、海産資源によって多くの方の生活が支えられてきました。これからも、その関係性は大きく変わらないと思います。これまで海とともに生活し、これからも、ともに生活する方々が海に少しでも近づけるように、そして海を好きになってもらいたいという想いで、計画に取り組んできました。昨年秋には、気仙沼地域開発社により、「迎(ムカエル)」という観光客をメインターゲットとした商業施設が開業しました。今後は被災者の方々などが営業し気仙沼の魅力を伝える店舗群「結(ユワエル)」、気仙沼のクラフトビールが楽しめ、集客力のあるマーケットや多目的ホールも併設の「拓(ヒラケル)」が順次オープンします。商業施設ですので、観光に訪れた方に楽しんでいただくのはもちろんのこと、海と関わる地元の皆さまが、そこで活発に交流していただけると嬉しいですね。
単なる支援で終わらせず、持続可能な活動に取り組む
今年3月には三陸高速道路気仙沼ICが、4月には気仙沼大島大橋が開通しました。観光客は年間150万人と被災前の6割程度の状況で、一部のインフラが整い、まだまだこれからという段階です。今後も、さまざまな場所で災害は起きると思います。被災地に寄り添う心を持ち、寄付することや、訪問して現地でお金を消費する「応援消費」に向けて、ぜひ多くの方々に足を運んでいただきたいと思います。
また、当社グループの従業員たちに呼びかけているのは、応援消費だけでは限界もあるので、日々従事している専門分野のビジネスの観点で被災地を考え、見て欲しいということです。現在、気仙沼が抱えている「少子高齢化による雇用不足」や「インフラ負担増によるコンパクトシティ化」などの問題は、今後、当社が関わる都市部でも直面する課題です。街づくりを基盤とする当社グループの全員が課題解決のスタンスで考え、関わりを持ち、解決策を模索・提案することは、気仙沼だけでないさまざまな被災地にとって、単なる支援ではなく、持続可能な活動となるので、非常に喜ばれると思っています。
震災から8年経った今、現地が期待することは・・・
震災から8年が経ち、現地では復興支援で期待することも変わってきています。当社グループの従業員たちに期待することを、気仙沼商工会議所の神山さんに聞きました。
震災以降、さまざまなご支援をいただき、心から感謝をしています。震災から8年。目に見えるところでの復興整備が終盤を迎えるとともに、三陸道の延伸や気仙沼大島大橋の開通など、震災以前より進んでいる部分も多くあります。第18共徳丸の打ち上げに象徴される大津波や津波火災などで壊滅的な被害を受けた鹿折地区・内湾地区がよく見え、地域再興が実感できる「復興記念公園」の建立も、多くの方々のご協力により順調に進んでいます。
震災直後は、がれきを動かすなどの人的支援が必要でしたが、これからは気仙沼に来ていただき、日々変化して行く気仙沼を楽しんで、魅力を感じてもらえればと思っています。さらに望めば、所謂「観光支援」で終わらせてしまうのではく、その魅力をビジネスとしても成立させ、そして気仙沼も潤うといった、単なる支援では終わらない、幅広いビジネスを展開する皆さんとだからこそできる活動を、今後一緒にできればと思っています。気仙沼で何か一緒にできることを考えてもらえると嬉しいですね。
東日本大震災は、多くの企業にとって自社の存在を見つめ直す大きなきっかけになりました。東急不動産ホールディングスグループでは、復興支援によって生まれたつながりを大切にし、変化する現地のニーズに合わせて、今後もさまざまな支援活動に継続して取り組んでいきます。