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TFHD GROUP MAGAZINE
2019年04月12日
ママ目線で理想の施設づくりを。「キューズ Mama Smile」プロジェクトに込めた思い。
キューズモールで始まった新たな取り組み
東急不動産が開発を担い、東急不動産SCマネジメントと共に運営管理を行っている関西の商業施設「キューズモール」。その全4施設(あべの・あまがさき・みのお・もりのみや)で、子育て中のママをサポートする「キューズ Mama Smile」プロジェクトが、2018年11月にスタートしました。
プロジェクトを担当したのは、育児の体験を施設づくりに反映したいと声を挙げたママ社員たち。キューズモールを子育て世代の目線で見直し、お子さま連れのお客様が安心して施設を利用できるようにハード面の整備を行うとともに、地域の子育て支援団体と提携し、子連れで参加し集えるイベント・ワークショップや、育児について相談ができる場を提供しています。そんな彼女たちに、プロジェクトに込めた思いなどについて聞きました。
インタビュー
野林 飛鳥:東急不動産SCマネジメント 運営本部(左)
土橋 裕貴:東急不動産 都市事業ユニット 都市事業本部(中央)
大内 保葉:丹青社 関西支店 営業部(右)
子育てをして初めて気がついたこと
野林:プロジェクトのきっかけは、私が育児休業中だった2016年にさかのぼります。子どもを連れて「もりのみやキューズモールBASE」に行った際、授乳室を利用しようとしたのですが、ベビーカーが大型だったこともあり、入り口でつっかえてしまったのです。結局、ベビーカーをその場に置き、子どもを抱っこしてから授乳室に入らなければなりませんでした。子どもが乳児の時は必要な荷物が本当に多いので、動作が増えることはママにとってかなりの負担となります。キューズモールでは広々としたプレイルームを設けるなど、以前から子育て層に寄り添った施設づくりを意識してきたのですが、そうした見落としがあったことに初めて気がついたので、ショックでした。お客さま目線に立ってきたつもりでも、自分自身が子育てを経験していないと実は見えていないことがたくさんある。そう実感し、以前から親しかった土橋さんに、復職したら施設の改善に取り組みたいという話をしました。
土橋:私も野林さんと同時期に育休を取っていて、野林さんとはよく情報交換をする間柄でした。野林さんから話を聞いた時、この体験談を施設の開発などを担当する自分の職場にまずはフィードバックしなければ、と考えました。育休から復職したタイミングで部長やリーダーにこの話をしたところ、「土橋さんと野林さん、せっかくママが2人もいるのだから、すぐに改善しよう」と、プロジェクト化することが決まったのです。
重要なのは些細なことへの気配り
野林:プロジェクトが発足して最初に取り組んだのは、子連れで利用する前提でキューズモールの全施設をもう一度見つめ直すことでした。授乳室は快適なのか、ベビーカーと一緒に入れるトイレはあるのか、おむつ交換台の近くに荷物掛けがあるのか。改善点を探りました。どれも些細なことですが、子連れの方にとっては、そうした配慮の積み重ねが居心地の良さにつながると思い、必要に応じて改修を実施しました。
土橋:全施設共通で実施したのが、ベビーチェアが設置されているトイレの個室の一部に鍵を追加する作業です。ベビーチェアに座ったお子さまのちょうど手の届くところに鍵があると、誤ってドアが開かないか、ママ・パパは心配で落ち着けません。そこで、お子さまの手の届かない高さにもう一つ鍵を設置して、安心してトイレをご利用いただけるようにしました。また、各施設の状況に応じてベビールームや授乳室のレイアウト、内装などを変更し、快適に過ごせる空間づくりをめざしました。
大内:私は改修の設計・施工を担当したのですが、自分自身が子育て中ということもあり、野林さんと土橋さんの「子育て世代にとって理想の施設を」という熱い思いを聞いて、自然と力が入りました。社内でママ・パパ6名のチームを結成し、4施設すべてに足を運んで現地調査を行うことで、自分たちの感覚が設計・施工に反映できるよう取り組みました。おむつ交換のスペースなどパパも利用するスペースでは、ラブリーすぎる色使いを避けるなど、誰にとっても居心地良く感じられる空間にすることを心がけました。
子育てサポートとにぎわいづくりの両立を
野林:プロジェクトでは地域の子育て世代がつながる場づくりや、子ども服の物々交換など、子育て中の方々を主役にしたイベントも定期的に開催しています。
土橋:そうやってソフトの面に力を入れるのも、自分たちの実体験がもとになっています。子どもが小さいうちは、外出するのであれば人出の少ない平日を選択します。子どもがぐずっても安心ですから。一方、商業施設にとって平日はアイドルタイムでもあります。そのため、平日に子育て世代を対象にした「コミュニティー型」の集客施策を展開すれば、子育てのサポートと商業施設のにぎわいづくりを同時に実現できます。特に子育て中の方は孤独を感じやすく、つながりを求めている方が多くいらっしゃるので、イベントへのニーズは必ずあると考えていました。
野林:「あまがさきキューズモール」で開催した、地元の女性クリエイターチームとのコラボレーションによるマルシェでは、予想を大幅に上回るお客さまにご来場いただき、大盛況でした。あまがさきでは、離乳食講座や赤ちゃんを可愛く撮影するためのカメラ講座など、現在も月に数回のペースでコミュニティー型のイベントを実施しています。また、「みのおキューズモール」で月1回のペースで開催している「みのマママルシェ」に参加したお客さまからは、「いつも利用しているキューズモールのイベントだから気軽に参加できる」といった声が聞かれて、うれしかったですね。それこそ私たちの狙っていたことで、お買い物のついでに立ち寄ってみるといった具合に、肩の力を抜いてご参加ただけたら、と思っています。
新しい商業施設像を提示したい
土橋:ECサイトが台頭するなかで、今後、商業施設が生き残るには、子育て世代のつながりづくりをはじめとしたコミュニティーの創造や、新しい時間の過ごし方などを提案する必要があります。このプロジェクトをきっかけに、そうした新しい商業施設像を提示できれば、と考えています。最終的には、「キューズモールがあるから、この地域に住みたい」といってもらえるような、暮らしの動機づけまで施設が担えたら素敵だなと思っています。